【考察】
　JDは輸血を受けた記憶がないので、おそらく双子の分娩時に予想より多い胎児一母体出血があったと思われます。抗Fy^aは元来免疫原性であるのが普通であり、新生児溶血性疾患と関連することがわかっています。今日まで、自然発生の抗Fy^aについての文献での報告は1例のみです。ほとんどの抗Fy^a抗体がIgGlサブクラスのものであり、Fy^aFy^aのドナーからの赤血球（RBC）と比較的良く反応し、酵索処理したRBCとは反応しません。抗Fy^aは通常、少な〈ともC3分子を介して補体を活性化します。
　Fy^a抗原は、RBC膜を数回通過する糖蛋白分子として生じます。44位のグリシンがFy^a特異性を与えます。Fy^a抗原は、Plasmodium vivaxとPlasmodium knowlesiという2種類のマラリアの受容体であることが知られており、そのうちのPlasmodium vivaxのみが人に感染します。この抗原は、ヒトRBCで認められますが、他の霊長類の血球では認められません。Fy抗原には、低pH、低イオン強度媒体中での保存、特に長期間保存の後に、血球表面から溶出する傾向があります。Fy^aFy^aドナーからのRBCには約17000のFy^a抗原部位がありますが、Fy（a＋b+）血球には約7000の抗原部位があるのみです。
　Fy遺伝子は第1染色体に割り付けられており、常染色体に割り付けられた最初のヒト遺伝子です。RH遺伝子も第l染色体にあり、Fy遺伝子に近いかシンテニーですが、その2組の遺伝子には関連はありません。
　今回はJDの出産前診断のType and Screenを行うだけですので、RBC単位についてのスクリーニングを行う必要はありません。しかし、今回JD用に適合する2単位を見いだしたいのであれば、Bまたは0、D＋またはD‐のRBC（６）単位のみをスクリーニングする必要があると考えられます。米国黒人の90％がFy（aｰ）であり（ほとんどがFy（a‐bｰ）ですが、一部はFy（a‐b+）です）、白人の34％がFy（aｰ）です。JDの血清中の抗Aにより、患者のAB0血液型は（７）型であることがわかります。

問題6．（6）の中に入る言葉は次のうちどれでしょうか？

　　　　　　　1〜2 2〜6 6〜12 　　　　　　　

前へ戻る　　　　　　　　　　　　　　　 最初に戻る