【考察】
SJの血液型判定およびスクリーニングについての貴院の評価と乳児の直接抗グロプリン試験（DAT）が陽性であったことから、2つの可能性が考えられます。一つの可能性は、乳児が父親から遺伝して乳児の血球に存在する低頻度抗原に対して抗体を得た可能性があるというものです。抗体スクリーニングには低頻度抗原に関して陽性の血球が含まれているとは考えにくいことから、そのスクリーニングでは陰性の結果が得られると考えられます。第2の可能性は、AB0不一致による新生児溶血性疾患（HDN）です。SJの血液型が0型であり、乳児の血液型がA型であることから、その可能性は非常に高いものであると考えられます。原因となる抗体を明らかにする一つの方法として、解離試験があります。
簡単な熱解離またはLui凍結一融解解離によって、乳児の血球を覆っていると考えられるAB0抗体の回収が良好に行えると考えられます。当然、市販の解離キットも使用できると考えられます。解離液と最終洗浄液について、スクリーニング血球および裏試験血球（AlおよびB）に対する試験を行わなけれぱなりません。AB0抗体が乳児の血球を覆っているのであれば、裏試験血球は解離物で陽性となるでしょう。裏試験血球が解離物で陰性の場合、低頻度抗原に対する抗体の可能性を調べなければなりません。
HDNは、母親の（４）抗体が胎盤を通過して、抗原陽性の胎児血球に付着した状態です。HDNの場合には、次のようなある一定の状態が生じるはずです。
1．抗体は母体で生成しているはずであり、胎盤関門を通過して、胎児の循環に進人することができるはずです。母体の免疫感作は、過去の輸血、過去（または現在）の妊娠からの刺激または自然発生抗体の結果であると考えられます。
2．抗体が形成される抗原は、抗体がその抗原と反応し得る程度に子宮内で十分形成されるものであるはずです。
3．抗体は、胎児血球に付着したら血球の破壊を起こし得る種類の免疫グロブリンからなるものであるはずです。胎盤を通して移動できるのはIgGのみです。IgM類およびIgA類は胎盤を通過しません。
問題4．（4）の中に入る言葉は次のうちどれでしょうか？
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